フランス語学留学2019-2020

フランス語学留学の記録

「フランスだから」「日本人だから」「ゲイだから」

 

f:id:suitefrancaise:20200330205244j:plain

 日本人だからこう、という括りで判断されるのはいやだったから、私も「フランス人」だから、とか「フランス」だからこうだよね、という見方を極力しないように努めた。フランスに留学した3カ月半で目に止まったことの全てから一旦「フランスだから」というフィルターを取り払わなければ、彼ら一人一人が作り上げた「生」が「フランス」という単語の中に吸い込まれて一括りになってしまう。

 

 ホストファミリーの二人のパパのことは、どうだろう。どんなお家だったの? と聞かれれば、「男性同士のカップルのお家だよ」と答えて、「moderneだね(現代的だね)」とか「おお(すごいね)」という反応が返ってくる。「ゲイのカップルさんのおうち」と言う必要があるのだろうか。ちなみに、「パパ」と呼びたくなるのは、最終日の最後の朝ごはんの時に「君が僕たちの養子になる手もあるよ」と言われたから。ゲイの二人は結婚当初から養子縁組のために様々な手続きを進めていた。私と彼らは同じ年代に属しているにも関わらず、言語能力的には「子供」と「大人」だったこともあって、私は彼らをパパとパパと呼びたくなる。

 

 でも(mais ではなくて、pourtant くらい強いニュアンスね)、彼らが話してくれたフランスで同性婚を認める法律が制定された際に起きた「人間狩り」のことや、とりわけ保守的な地域に存在する人々の否定的な態度などを思うと、彼らの「生」を「ゲイのカップルさんのおうち」とはっきり表して、伝えることが必要だと思う。つい先日、欧州で、アンジェイ・ドゥダがポーランド大統領に勝利したことからも、その必要性を強く感じる(彼は、 « lidéologie LGBT" est "plus destructrice que le communismeと発言した)。

 

 あなたの人種はなんですか? あなたの性的嗜好はなんですか? それを、つまり変えようのないことを、変える必要のないことを、外敵圧力に脅かされているのなら、変えなければいけないのはそちらの方。こうしたことを自分の言葉として発信したくなっただけでも、コロナ禍の2カ月前に、今となっては滑り込んでフランスに入国した意味があったなと思う。